平成28年度 第1回勉強会報告(11月12日開催)
平成28年11月12日(土)に今年度第1回勉強会を新宿の日本公衆衛生協会の会議室で開催しました。テーマは「保健時の記録」です。保健師活動を見える化させ、かつ、保健師活動の力量アップを図るもの取り上げました。会場の都合から30名とさせていただきましたが、45名の参加がありました。さらに参加の希望を頂いたのですが、お断りした方がありました。申し訳ございません。
■プログラム
講義:保健師の記録(家庭訪問を中心として)
講師:山口 佳子 氏 東京家政大学看護学部教授
事例による演習
6~7人のグループで、演習事例用の記録を読んで各自改善が必要だと思う部分を書き出し、グループで話し合い改善策を検討
発表・解説
■講義の主な内容
<目的>
○保健師記録を書く目的がわかる
○保健師記録に書く内容の基本がわかる
○保健師記録の書き方の基本がわかる
<なぜ保健師記録を書くのか>
・情報を整理・分析することで、自らの援助の質を高める。
・今後の援助に役立てることで、援助の質をたかめる。
・専門職の成長にもつながる。ケースのパターンが見えて、予防的に介入する事もできる。
多職種と情報を共有できる。何をとらえて何を大事にしているか伝えられる。
・開示請求があっても、記録がきちんと書かれていたことで、理解が得られて事例ある。行政としての説明責任を果たす。*記録は保健師を守る盾にもなる。
<保健師記録に何を書くのか>
・援助目的:明確にしておくことがポイント
・年月日・曜日・援助方法・対象・同席者
・アセスメントの根拠となる情報:相談者の主訴、生活状況や考え方、価値観を表す事実を書く(援助に役立っていく)
・アセスメント
・保健師が行った援助:実際に行った援助を「誰に」「何について」「どのように行ったか」を具体的に書く
・評価:援助に対する対象者の反応や決定事項
・今後の援助計画:見通しや計画・具体的な援助の時期や方法、今後情報収集が必要な内容を書く
・署名・押印
<記録はどう書くのか>
・事実と判断を区別して書く(非常に重要)
・保健師自身がとらえた情報(直接確認の事実と伝聞の事実は区別をして書く)
・伝聞の事実を書く時は情報源を明記する。発言内容は要約して代表的な言葉は「 」を使ってそのまま書く
・事実は客観的に書く(頻度・尺度・物にたとえる)
・行為や言動、態度などは事実を具体的に書く(保健師の判断でははい)
・否定的な表現を書く時は要注意。具体的な根拠となる事実を書く。否定的な表現で書くことが援助の役に立つか、記録に書く必要があるかを考える。レッテルを貼ることで、対象者のニーズを見失わないか、先入観をつくってしまい信頼関係を損なうこともある。
<文章をわかりやすく書くポイント>
・5W1Hを意識して書く
・短い文章で、主語と述語を明確にする
・小見出しを活用しまとまりをつけ、独特な言い回し、敬語、略語は(なるべく)使わない
・続柄は本人を起点に書き、図表を活用する。読みやすい字で丁寧に書く
<黒のボールペンや万年筆>
記録の改ざんを防ぐためは、黒のボールペンや万年筆をつかい、訂正部分は線を引き訂正印を押す。行をあけない。その都度書く。(自治体の公文書作成の規定に沿って書く)
■発表と解説
グループに分かれ演習事例に取り組み、改善について話し合い、その結果を発表しました。
・電子記録となっており、供覧はできるが、報告はしていない。
・1回の訪問は1枚の記録にしている。
・書き方が抽象的で、事実と判断が混在していることが多い。
・上司に訪問目的を確認してもらってから訪問に行っている。
*各自治体で保健師記録のガイドラインがあるとよい。
■情報提供
東京都が記録のガイドラインを作成している。平成13年に作成し、22年に改訂
・書く内容・記録の保管、開示請求があったときの対応などについて記載してある。
■アンケート結果にみる参加者の様子(n=27)
講義「保健師の記録について」はいかがでしたか。(一部抜粋)
・記録の書き方について10年以上前の学習(所内研修)知識のままであったので、改めて学習したいと思い参加しました。
・期待以上でした。地域診断のまとめ方と視点は同じですね。平常時からの記録を大切にすることが保健師の質を上げることになると思いました。
・難しく考えすぎて手が進まなかった記録ですが、意外とシンプルに書けることもわかり、ため込まずに書けそうです。
・記録が"セルフ事例検討″とういうことを聞いて先生のお話から納得しました。記録を書くことで保健師の援助活動の頭の整理にもなり、何のための援助なのかを明らかにすることが出来ると思いました。
・自分の書き方が正しいのか、どのように修正したら良いのか悩むことが多いですが、今日、回答例で示して頂いたので改善ポイントがわかりました。
・とても分かりやすい内容でした。早い時期に学習すべき内容です。
・今までもやっとしていたことが、まとまって整理された内容で大変ためになりました。基本のことも多いと思いますが、日常流されているので、明日から1つでも実践していきたいです。
・記録の目的、即ち援助の一貫性や継続性を保ち、援助の質を高めることが理解できました。
・普段の活動で気になっていることが、言語化されることですっきり自分の中に落ちてくる感じがありました。
・大学や職場でも記録について授業や研修を受けた記憶がなく、やりながら、なんとなく書けているつもりになったような気がしていました。改めて記録の大切さを感じましたので、またレベルアップできるように(後輩ともお互いに指摘出しできるように)頑張ります。
演習はいかがでしたか。(一部抜粋)
・見事なファシリテーターのお蔭で、若い方への指導の方法(日常の中での気づきを促す)のヒントも頂きました。
・自分のとらえとは違ったとらえ方もあり、とても勉強になりました。
・職場でも仲間と同じような時間を持ちたいと思いました。
・演習があって具体的理解が深まりました。
・普段、つい長々と書いてしまっていたが、目的がはっきりしていなかったからではないかと感じました。
・演習の回答はとても参考になりました。
・事例も考えるポイントがたくさんあって考えられた教材だと思いました。
・他自治体の方の記録の書き方、管理の仕方を聞くことができ、貴重な機会となりました。
・自分の記録の悪いくせや改善点が明確になりました。
・1回の訪問記録でも事例検討ができると感じられました。
発表・解説はいかがでしたか。(一部抜粋)
・日頃の業務の改善点まで話を深められていてすごいなと思いました。
・短時間なので、模範回答例が示され、講義内容をより具体的に理解するのに役立ちました。
・きちんと振り返りができてよかったです。
・発表もすばらしく、解説もわかりやすく大変勉強になりました。
・自分の中にしっかり落ちた研修であり、短い時間でしたが、濃い研修になりました。
・回答例もいただけて、明日以降の業務に役立てます。所に戻り、保健師に共有したいと思います。
研究会や事務局へのご意見・ご要望
・地域包括支援センターに勤務している保健師を対象とした勉強会もあるとよいと思いました。
・遠くから出てきたのでもう少しみっちりやっていただけると嬉しいです。
・テーマ:保健師活動の基本での学びとなるもので企画いただいた会のみなさんに感謝いたします。
・電子カルテの状況、課題ももう少し聞きたかったです。
・研修会の回数を増やしても良いのかなと感じました。
■まとめ
記録は保健師活動の実際を見えるものであり、保健活動の質を向上させるツールでもある。また、公文書としても活用されるような記録であることも必要であり、記録は奥の深いものであることを学んだ。
今回の講義の内容を参考にして、所属で保健師記録の目的や内容・書き方について情報を共有し、活動を見直す機会を持って、保健師活動の質を向上させていこう。