平成29年度 第1回勉強会報告
去る10月14日(土)午後に日本公衆衛生協会会議室において、とよたまこころのクリニック所長の鷲山拓男先生をお招きし、「実践においての対象との出会い方~保健師に期待すること~」を演題としてご講演いただき、第1回勉強会を開催しました。
初めに、保健という領域で活動する"保健師の仕事の特徴"を他の援助職との違いを示して話され、保健師はこの特性を自覚し、これらは手放してはならないし、誇りをもって住民とかかわることだ"と、保健とは何か、公衆衛生とは何なのかを再確認することから始めて下さいました。
先生の講演に"保健師が築く支援関係そのものが予防になる"がありました。予防とは、予防のための知識を伝え、気づきを促したから対象は予防するようになるのではなく、保健師がかかわり寄りそう想いがあることを伝える関係が、人の問題・課題に向かい合う力を湧き起こし、解決や改善の一歩になり予防につながるのである、との言葉に衝撃を受けました。これは個別支援において大きな意味を持つものですが、この姿勢で集団やネットワークづくりに臨むことで保健師の本来の機能は発揮されると思わされました。
また、この関係の築き方をどう習得するかは、"先輩のかかわり方を何回も見て、保健師は何を考え、対手の何を受け止めてどう言葉を発したのかを、先輩と振り返り理解することだ"とも話されました。
我々は立派なモデルになれるわけではないかもしれませんが、自らの反省も含めて後輩と振り返り、実践の場において身をもって育てることの重要性を再認識させられました。
まだまだたくさんのことを伝えてくださいました。
講演の配布資料は会員専用ページからご覧いただけます。
≫会員専用ページへ
講演中の鷲山先生と会場の様子
講演の後、グループに分かれて話し合いました。以下は先生との質疑とアンケート結果です。
質問:援助関係の築き方をどう後輩に伝えていけるのか
鷲山先生
・どんなに手間がかかっても患者(精神疾患で外来にきた)が自分の足で病棟に上がってもらう(入院する)関係を作ることが重要である。最初の精神科医療で退院後に外来につながるか、その人の一生が決まってしまう。自分の足で病棟に上がった人は99%以上、治療中断をすることなく継続されている。
・それがないと、入院治療→退院→治療中断→再燃→強制入院を繰り返すことになる。
・病院の中だけで実現しなければ、保健師と連携して、しぶしぶでもいいから「この人がそこまで言うのならやってみよう。」と、頭では納得していなくても関係性の中で納得してもらう。
・援助関係は、迷いながら選び取る。患者はその時に信頼できる人がいうのなら、やってみようと納得できる関係か。
・統合失調症の20年予後を改善する手法が虐待予防に使える。
・すぐにはできなくても、できる人の対応を見るところから始める。新任1年目がとても大事である。その間に先輩保健師の手法を見ることで対応ができるようになる。
・私は、師匠である中沢正夫医師(生活臨床)の援助関係形成の手法を100回くらい見たが、はじめは魔術にしか見えない。保健師でも同じことが起きているはずである。
■アンケート結果(n=16)
講演内容(一部抜粋)
・看護師として10年以上勤務してきた後、保健師の勉強し免許を取得しました。今回の講演を受講したことで保健師の役割、存在の大きさを学ぶことができました。今までの私の頭の中には米国の自己責任論の考え方があったことに気づけました。保健師として働いていくために貴重な機会でした。
・保健師としての役割を再認識でき、また、こんなに応援してくださる医師がいらっしゃることに感謝します。元気をいただきました。
・保健師活動をする意義を再確認させていただきありがとうございました。
・先生の実際のご経験を通して聞かせていただき、現場の保健活動でのいけない部分を考えさせられました。
・保健師の存在意義を明確に示してくださった。(最新知識)研究データをいろいろ示してくださった。「生活臨床」の歴史的意義を保健師仲間に再認識してもらったことをもっと考えないといけないと実感させられました。
・保健師活動を保健師以上に把握して実践されている。鷲山先生の虐待に関する理論と保健師の役割とをからめてご講義いただき、自身の知識の整理を今後向うべき方向を考えることができました。
・日頃行っている活動がこれでいいという自信を持つことができました。多くの保健師に聞いてほしい話でした。
・保健師の活動をしっかりと見て評価してくださっていて、とても勇気づけられました。元気が出るお話でした。ありがとうございました。
・保健師の母子保健活動をデータとして説明してもらえて参考になりました。
・先生のお話をうかがい、日頃自分が感じていたことがとてもよく整理できました。今後の業務に生かしていきたいと思います。
グループに分かれての話し合い(一部抜粋)
・保健師の先輩方の話しや考え方を直接聞けたことが本当に良かったです。保健師としての視点や活動を学ぶことが出来たと思います。良い刺激を与えていただきました。
・保健師とは何をする人なのかという事を考えさせられました。
・他県・市の状況が聞けてよかった。同じ悩みを持ちながらも頑張っている様子を聞くと頑張ろうと思える。
・皆さんの活動や頑張りを聞くことができて良かったです。
・若手とグループディスカッションできてうれしかった。
・若い保健師の厳しい意見も多い中、がんばらなくてはと思わなければならないと思いました。
ご意見・ご要望
・大学で知識は多く身につけてきたと思いますが、今日参加し、講演を受講し、グループワークでお話をきけたことは、保健師の経験の少ない私にとって大切な機会となりました。
・基本的な姿勢を示していただけました。
・今日も勉強会に参加させて頂いて、いろいろ心がゆさぶられました。先生のお話をきくのは2回目でしたが、毎回いろいろな発見があります
日 時:平成29年12月16日(土) 午後1時半から4時半
場 所:東京都福祉保健財団 ハイジア 研修室
テーマ:母子保健活動における保健師の専門性(仮)
児童虐待防止に焦点を当て、母子保健担当保健師、児童福祉領域、産科領域、NPO領域からのパネリストによるパネルディスカッションで、保健を担う保健師の専門性を確認する企画とする予定です。追って、詳しいプログラムをお知らせします。