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平成29年度 第2回勉強会報告

 平成29年12月16日(土)に東京新宿の東京都健康プラザハイジアで第2回勉強会を開催しました。話題提供者とお話しくださったテーマは、

1.藤巻 嘉須美(ふじまきかすみ)氏 東京都新宿区牛込保健センター 保健師
 テーマ:虐待防止に向けた新宿区保健センターにおける母子保健の取組について
2.上川 光治(かみかわこうじ)氏 東京都児童相談センター相談援助課
 テーマ:乳児死亡事例を通して保健師に期待すること
3.水主川 純(かこがわじゅん)氏 聖マリアンナ医科大学医学部 産婦人科医
 テーマ:産婦人科医の立場から
4.土屋 麻由美(つちやまゆみ)氏 一般社団法人にんしんSOS東京 助産師
 テーマ:0歳0ヶ月0日目の虐待死をなくしたい 妊娠葛藤相談の現場から

 新宿区の藤巻保健師からは区としてのきめ細やかな虐待防止に向けた取り組みをお話しいただきました。上川さんからは児相で対応した0日・0か月の事例の妊娠期の状況を伺い、保健師に期待されることを学びました。産科医の水主川先生からは飛び込み出産の現状を、そして助産師の土屋さんからは妊娠したことで葛藤し深く悩んでいる妊婦さんがたくさんいることを知らされました。
 行政の保健師が出会える妊婦さんは出産しようと決断し母子健康手帳を手にした方であることを改めて確認し、妊娠に悩み健診を受けることもなく、もちろん母子健康手帳を得ることなく出産を迎えてしまう方への支援の実際を学ぶ機会となりました。保健師がこのような方の存在を知り寄り添うには、どうしたらよいのか、何を予防することなのかを考えさせられた勉強会でした。

≪会員の方へ≫
 当日の話題提供(水主川氏を除く)の様子を動画としましたので、会員方は会員専用ページからご覧ください。水主川氏については当日の配布資料を添付しました。
 ≫会員専用ページへ

 グループにわかれての話し合いとアンケートの結果を以下に紹介します。

グループに分かれての話し合い
<話し合われたことの主な内容>

・新宿区の体制は素晴らしい
・保健師として「見る力」が大事
・支援に必要な力を担当者と上司の立場でチェックするダブルチェックの
・リスクをチェックする力は事例検討会で身につける
・地域の実態を伝える。関係機関との連携(養護教諭、医療機関など)
・切れ目のない支援、次に何をするか、妊娠届の前からの支援
・思春期教育(いきるを支える、命の大切さ)
・信頼関係、寄り添える人材としての保健師の現任教育
・妊娠検査薬を販売している薬局との連携等、チャンスはいろいろある
・24時間電話対応⇒その先のつなぎが重要

<グループごとの話し合い>
■1グループ

・母子手帳の交付時に面接をしてアセスメントをする。保健師の見る力は大切。担当者が問題解決したと支援終了とした記録を上司が確認した時に不明な点があり、再確認をして支援を再開したケースがあった。
・感度を上げていくこと、ダブルチェックを実施することが大事。
・面接時にエジンバラを使っている。極端に点数が違ったらおかしいと感じる。妊婦と出会うチャンスを捉えられる力をつけていくことも必要である。
・アセスメントの深さを高めていくには事例検討をすることで技術力を高めることができる。
・こどもの性教育にかかわると、養護教諭からの相談も受ける。精神科医師とのかかわりも出てくる。

■2グループ
・保健師は小中高の養護教諭や市と連携し、思春期のこどもを対象に性教育や命の大切さの教育を役割分担して実施している。性感染症の健康教育からHIV検査につながったこともある。HIVの検査時にカウンセリングを実施している。
・養子斡旋の団体から連絡を受けて支援をしたケースもある。うまく連携ができていくと支援が継続すると感じている。ホットラインに匿名で相談があったケースには、「新宿の妊婦」という情報のみで電話で支援を継続したことがあった。
・以前、住民票がないと母子手帳が発行できないと言われた。DVで住所地が定まっていない場合は、住んでいるという実態をもとに母子手帳を発行してもらえるとよい。
・知的障害があり妊娠を繰り返し、避妊ができないケースは支援が困難であった。ネグレクトの家庭環境もある中で、避妊指導が必要な事もあるため支援者のスキルアップも必要だと感じた。
・児童相談所で虐待対応をしていると、予防の難しさを実感する。短期間の出会いを次につなげていくことが大切。
・「行政はいいです。」と受け入れない若い母がいる。母親は相談をしても解決しないとあきらめている。地域の保健師が寄り添っていけると良い。

■3グループ
・新宿区の支援体制がとてもすばらしいと感じた。かなりの業務量の中で妊婦のフォローしている。相手を認めるところからはじめていくことが大切と感じた。
・虐待は把握できないことが多い。職場の中でも切れ目のない支援が大切。若い保健師をどう育てていくか、人材育成の重要性を感じている。人と人とのつながりや信頼関係の構築が大事と思う。
・業務担当制に変わり組織の縦割りでつながりにくさがある。より多くの対象者に出会い、出会ってからつながっていくことを大切にしたい。
・職種間での理解や見解の相違があることもある。それをそのままにしないで、検討していくことが必要だと思う。
・関係機関、医療機関との連携も大切。

■4グループ
・妊娠検査薬を販売する薬局と連携して支援窓口・保健師のPRをしてはどうか(24時間体制の電話相談)その先をいかに継続して支援していくかが課題である。
・地域の学齢期・思春期のこどもたちの実態を中学校・高校の先生に伝え、危機感を持って対応をしてもらえるよう連携していく。妊娠をすると女子は退学になってしまうが、そうならないための工夫が必要。
・HIV検査のときにも相談ができるようにしている。
・地域の実態をしっかりつかんで伝えていくことから実施していく。支援のチャンスはいろいろある。

■講師からのコメント
・虐待は見えない部分がまだまだある。それを見えるようにして感じていけるようにしていきたい。
・年齢の高い方からの相談も多い。保健師には産む相談はできるが、産まない相談はしにくい。秘密は守るからつらい事も話してくださいと伝えて支援をしてもらいたい。
・保健師ってこんなに大変な仕事をしていたんだと改めて知ることができて良かった。児童福祉司は若く2~3年と経験が浅い職員が多い。皆さんの経験を教え導いてほしい。
・保健師は年末の土曜日の研修会に参加し、すごく熱心に話し合い、すごいと感じた。うまくいかないことも多く、苦労が多いと思う。何かをすれば報酬が上がるということもない公務員としての仕事の中で、ここまでやるっていてすごい。心が折れないように長く続けてほしい。

■まとめ
・話題提供者の皆様方、貴重なお話をありがとうございました。母子保健の予防がいかに大切か、保健師活動を誇りに思って、一歩踏み込んで多職種で連携して支援していきましょう。

■アンケート結果(n=16)







■講演内容(一部抜粋)
・乳児虐待の現状と課題をそれぞれの分野の立場から理解することができた。行政につながることすらできない方への対応は深刻な課題だと実感した。
・どのテーマも興味深く参考になりました。所属部署でも課題に感じていることが同じであったため、進め方の方法としての手法としての参考になりました。
・どの先生も興味深く貴重なお話をうかがうことができました。すぐには整理がおいつかないが、保健師の役割を本日の先生方のお話を参考に整理をしていきたい。
・様々な立場でのお話があり、とても興味深いものでありました。切れ目ない支援をするためにはそれぞれの役割を明確にし、役割分断にならないようにすることを強く感じた。
・大都市で切れ目のない母子支援として新宿区の話が参考になった。
・様々な立場の方から具体的な話が聞けてとても考えさせられました。なぜ、多職種連携が必要なのかがわかった気がする。
・信頼関係をつくる中で少しさがってかかわる事がありましたが、必要な時には、多くの機関を巻き込んで支援ができるようにしたいと思いました。アセスメント力に関してはあらためて必要性を感じました。
・それぞれの分野での実情を保健師へのメッセージありがとうございました。産科分野の現実、妊娠SOSのお話はめったに聞けない内容で、学びが深まりました。児相の現状は頭の整理になりました。
・保健師だけでなく、他職種の話もきけて、大変勉強になりました。今日も参加してよかったです。
・様々な職種の方々からの講演はとても興味深かったです。捉える視点も違うので、私の知らなかった知識や視点を学べてとても勉強になりました。
・産婦人科、妊娠SOS、児相、保健センターそれぞれの視点・立場から共通のテーマでお話を伺うことができて大変勉強になりました。

■話し合い(一部抜粋)
・具体的に取り組める方策、視点を養うことができ有意義だった。
・色々な立場のお話が伺えて考えることができ、母子保健の予防活動の重要性をあらためて感じ、職場に持ち帰りたいと思いました。
・自分の思った事をさらに口に出して言うことで内容を深めることができました。
・各所属の現実を知り、あらためて保健師の専門性を認識しました。
・教員の方や市町村の保健師の方、児相の課長の方から具体的なお話が聞けたので大変おもしろかったです。当事者を取り巻く職種の役割がたとえ重なったとしても良いのではないか、他職種との連携と言っても最終的には人と人とのつながりが大切で信頼関係で仕事をしていくものだという事は印象的でした。
・PHNとして地域の中で、妊娠の相談が大切という意識をどう作っていくかを考えたいと思いました。PHNの役割と思いました。
・出会わない人にどう出会うか、あまり考えていなかった部分であり、勉強になった。

■感想・ご意見
・今日学んだ課題や方法をどのように現場へ反映することができるか、要対協のあり方、連携(地域ネットワーク)のあり方を考えていきたい。性教育についてはこれからすぐ実践できる立場にあるため、行動化していきたいと勇気づけられた。
・妊娠相談をやっていると積極的に周知をして、まずはつながりたいと思っています。妊娠=出産だけではなく、妊娠で悩んでいる方にアプローチできたらと思っていますが、行政の動きにくい部分もあり、進め方に悩みながらやっています。住民と行政と手をとりあってできたらいいなと思います。
・今回のように、一つのテーマにかかわるいろいろな職種の話しが聞けるとよいと思います。
・新宿区の取組みに少しでも近づくよう努力しましょう。
・相手を責める事は簡単に出来るし、正当な事を言うのは簡単だと思います。しかし、保健師にとって大切なのは、まず相手を認めようとする姿勢と言葉がけが大切であり、求められているのだと思いました。今日は元気と勇気を頂きました。ありがとうございました。

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